これは私が毛鉤を巻くときに使う材料のうちの「ダビング材」という種類の材料です。
我が家で幼年期を預かっていた盲導犬候補生のマイオ君の毛も保存してあります。
左半分はほぼ獣毛です。
ウサギやリス、オポッサム、キツネ、ビーバー等々、また染色してあるものもあります。
右半分は主に伝統的なウェットフライを巻くためのダビング材で、手前の二列は各色に染色したシールズファー(アザラシの毛)、奥の二列はシンセティックマテリアルで本来はシールズファーの代替の為のものだったのでしょう、国分寺の沢田賢一郎氏のブランドであるサセックスのサーモウェブです。
新たにダビング材を追加しました。
ぜんまいの綿毛です。
購入はこちらの「n-VISON」から。
日本においてはテンカラ用の毛鉤のボディの材料として古くから使われていました。
春にぜんまいを収穫した際に生じる副産物です。
いや、確かに毛鉤を作っている人間から見れば「こりゃ使える!」ということになりそうな「副産物」です。
西洋毛鉤では植物由来のダビング材は、私の知る限りありません。
和洋問わず、あくまでも手軽に入手できる材料を使っていた結果が現在の毛鉤パターンのスタンダードになっているだけだと思うのです。
しかし英国では、ある時代に入手困難な素材をあえて使うという方向に向かったというのも事実です。
これは「毛鉤釣り」という釣りが、英国においては庶民の釣りではなかったという事も影響しているはずです。
植民地から輸入される様々な鳥獣類の羽根や毛を毛鉤というレジャーの道具にできるのは、当時の英国ならではでしょうね。
しかし日本においても毛鉤釣りは「山」に住む者しかできない特別な釣り。
キジの羽やぜんまいの綿毛を使う釣りを出来るのは、山に住む者にしか無い特権ともいえるのです。
さて、せっかくの和素材ですから和式毛鉤に仕立てましょう。
逆さ毛鉤にしました。
ハックル(蓑毛)はキジです。
このぜんまいの綿毛、我々毛鉤釣師がどれだけ必要としようとも微々たる量です。
食用にするぜんまいから排出される綿毛を使いきるほどには至らないと思います。
それでも排出物(ゴミ)が多少でも売物になるのならば良い事ではありませんか。
先にも書きましたが、毛鉤の材料なんて入手できる範囲での工夫の結果。
私もハリスツイードのジャケットの毛玉(鞄のストラップが摺れる肩部分に特に生じる)を毛玉取り機で取ったカスもダビング材に出来ないかと思い使ってますからね。
恐らく素材としての優劣は死ぬまで判らないでしょう。
逆に判らないからこそ別の素材を試してみたくなるのです。
そう、判っているならばこれほど浪費することはないのです。
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