2011/06/27

渓流の魚と放射性物質

震災というか、福島第一原子力発電所の事故に関しては様々な報道がありますが、私の身近なところで予想に反した事がありました。
それはヤマメなどの渓流魚に放射性物質がどれほど蓄積されるかという事です。

今日のニュースですが『政府は27日、暫定規制値を超える放射性物質が検出された福島県の阿武隈川(信夫(しのぶ)ダムの下流域に限る)と真野川、新田川で取れるアユ(養殖を除く)について出荷停止を同県に指示した。アユの出荷停止は初めて。いずれの川も漁の解禁日は7月1日。阿武隈川のうち信夫ダムの下流域についてはウグイの出荷停止もあわせて指示した。(毎日新聞)』とあります。

かなり前になりますが、水産物の放射性物質検出が多々発表される中に「ヤマメ」が含まれていた事には正直驚きました。
現実には『これまで(6月24日現在)の水産物の放射性物質調査において、アユ、ヤマメ、ウグイ、ワカサギ、イワナで暫定規制値を超える値が検出されており、引き続き、淡水域の水産物についても広く調査を行います(水産庁)』という状況になってしまっています。
ヤマメやイワナは渓流のかなり流速の早い水域に生息する魚です。
彼らが主食とするのは水生昆虫、カゲロウやトビケラ類です。
これらの昆虫は川底の有機物等を餌としています。
これらの餌にセシウム等の放射性物質が含まれていたと考えるのが妥当です。

川というのは、確かに周辺の山々に降り注いだ雨が合流した流れです。
ですので、川の表面積からは考えられないほど、周辺の降下物を集めているだろうとは想像できます。
しかし予想外だったのは、その周辺の森林の木々や地表の植物がもっと吸着すると思っていたのが、実際はかなりそのまま川へと流れてしまったのではないかという事です。もともとカリウム等のミネラルが少ない山岳部の環境で育つ植物、樹木はもちろんですが森林部の草や苔、カビ類などは吸収しない(それほどミネラルを必要としない)のでしょうか。

魚をはじめ、水中で生活する生物の多くは「エラ」で呼吸しています。
肺呼吸と決定的に異なるのは、エラ内部を通過する水に含まれる酸素を吸収することです。
エラからミネラルを吸収しようという働きは殆ど無いはずですから、呼吸器官からセシウム等を吸収することは、殆ど無いと思われます。
我々、肺呼吸の場合は気体を肺胞に取り込んでから酸素を吸収しますから、イヤでも肺胞内に不要物を蓄積する構造だと考えられますが、それに比較すると呼吸による放射性物質の取り込み量は大幅に少ないでしょう。
いずれにせよ、渓流魚達の内部被曝は捕食する行為を通じての結果が殆どであろうと思うのです。

我が家では「ヤマベ(オイカワ)」を飼っています。
渓流というよりは中流域に生息するコイ科の魚です。
上のニュースの「ウグイ(ハヤ)」も同様に中流~上流域に生息するコイ科の魚です。
先日、秋川では私の毛鉤に掛かってくれました(全てリリースしましたよ)。
うちのヤマベ君達を観察していると思いますが、魚達は猛烈に食べますね。
恐らく有機物の少ない上流域に生息する魚達は、常に食べまくりの生活だと思います。
何か食べれそうな虫っぽいものが流れてきたら、すぐにガポッとやってしまうのだろうと思います。

だから「フライフィッシング」なんて釣りが成り立つのであって・・・。
そして体内においては、少ない栄養素を効率的に溜め込むシステムがあるのかもしれません。

アユなどは苔しか食べません。
呼吸でなく食べることから蓄積したとすると、川の底石に生息する苔類が蓄積したと考えるのが普通です。
これら苔類も、張り付いている石から窒素やカリ、リンを取り込むのは困難と思われます。
すると流れている水から強力にこれらの必須栄養素を吸収する機能を持っているのかもしれません。
アユ達は、この強力な吸収力を利用して生活しているのでしょう。

人間が考える常識以上に、生物達は自分達が生息する環境に適応し、必要な栄養素をいかに効率よく吸収できるかという分野で進化しているのではないかと思います。

海産物の放射性物質の蓄積、食物連鎖による高濃度化に関してはどうなのでしょうか。
この件に関して原子力安全委員会が海外メディアに対して行っている記者会見の映像をYoutubeで見たことがあります。
海外の記者が「食物連鎖によって蓄積するのではないか?」との質問に、確か西山審議官だったと思いますが「食物連鎖によって蓄積、高濃度化することはありません(英語で)」と回答(断言)していました。
海外記者もそれ以降質問を続けることはありませんでした。
この記者会見そのものが、とても寂しいものでした。
何十席も用意してある椅子に対し、数席しか記者がいないという・・・。
私もそのやり取りを寂しく思い、いや一方では驚きました。
原子力の専門家は生物学においても「断言できる検証」があったのだ、と。
きっと、あらゆる魚達を人工飼育し、飼育している水にセシウムを混入する実験をしたのでしょう。
さすがです、恐れ入りました。

ですが、申し訳ありません。
私はこの西山審議官の断言を拍手喝采で「それなら良かった、大丈夫!」と思えないのです。
断言するからには、きっと行っているはずの検証について全く触れられなかったものですから。
この私の投稿も「思われます」という記述が多いですね。
なかなか断言などできません。

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